そのひとつに「仏説温室洗浴衆僧経(温室経)」があります。
「燃火、浄水などの七つのものを調えれば、七つの病を除去し、七つの福が得られる」という教えで、湯や風呂に入ることにより、功徳を積むというものです。
伝統的な禊では、冷たい水で身体を清めていましたが、温かい湯を使い、しかも湯浴みすると功徳が得られると説く経典でしたから、僧たちだけでなく、庶民も喜んで施浴を受け入れられました。
現在も奈良の東大寺に「大湯屋」があります。
そこには、湯を沸かすための大きな鉄の釜が残されていますが、この湯釜は、重源というお坊さんが寿永三年(1183年)に鋳師・草部是助に鋳造させたものです。
ただ、風呂は湯をたっぷりと使いますから、水や薪の確保など、大変な作業となります。
そこで、釜で湯を沸かし、その湯気を隣の密閉した部屋に送り込む、つまり蒸し風呂が主流でした。
直接湯を使うのは、釜に沸かした湯を汲み取って身体にかける「取り湯」が中心でした。