かけまくも畏き、伊邪那岐の大神、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐が原で禊ぎ祓い給う時に成りませる祓え戸の大神たち、諸々の罪穢れをば祓い給え、清め給えと申すことを聞こし召せと畏み畏み申まおうすー日本で最初の国記ともいえる記紀には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の冥界下り神話に付随して禊が語られています。
日本の国土は、伊邪那岐命、伊邪那美命(いざなみのみこと)の男女神が「産み」ました。まず、淡路、四国を産み、 次に隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡を産み、さらに本州を産んで、大八島国(おほやしま)という名ができます。
こうして世界を構成するあらゆる 神を産んだ伊邪那美命は、最後に火の神である迦具土神(かぐつちのかみ)を産みますが、炎の塊を産んだため、やけどを負って死んでしまいます。
これを嘆いた伊邪那岐命は、妻を黄泉(よみ)の国まで追っていきますが、すでに黄泉の国の食事をとってしまった伊邪那美命は帰れない決まりになっていました。現世に帰って作りかけの国を完成させようと伊邪那岐命に頼まれた伊邪那美命は、黄泉神と相談してみるが、決して私を見ないようにと言って、殿内へ入っていきました。ところがなかなか帰ってこないので、待ちきれなくなった伊邪那岐命は中を覗いてしまいました。すると、伊邪那美命の体に蛆が湧き、八雷神が化生していました。
驚いた伊邪那岐命が逃げ帰ろうとすると、恥をかかされたと怒った伊邪那美命は、黄泉の国の軍隊や八雷神を差し向けて追ってきて、黄泉平坂(よもつひらさか)という黄泉の国と現世との境目で追いつかれてしまいます。そこに現れた黄泉の国の番人、黄泉守道者(よもつもりみちひと)と菊理姫神(くくりひめのかみ)の計らいで話し合った末、伊邪那岐命は黄泉の国から脱出できました。
現世へ帰った伊邪那岐命は、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐が原で史上初めて「禊」をします。
「上の瀬は流れが速い。下の瀬は流れが弱い」と言って、初めて中の瀬に沈み潜って濯(すす)いだのが始まりです。
死の国の穢れを祓うため、左の眼を洗うと天照大神(あまてらすおおみかみ)が生まれました。また、右の眼からは月読神(つくよみのかみ)、鼻からは、須佐之男命(すさのおのみこと)が生まれました。
その場所がお祓いの発祥の地であり、伊邪那岐命、 伊邪那美命を祭る宮崎県宮崎市の江田神社があります。