沐浴 ~入浴の歴史

沐浴 ~入浴の歴史(湯治を自宅で…)

水やお湯を浴びる、水やお湯に身体を浸ける、これらの行動には宗教的な意味合いがありました。
頭から水を浴びることは「沐」、身体を水に浸けることは「浴」を意味します。
神を礼拝、祈願する時には、まず沐浴して身体的、宗教的な穢(けがれ)を落とします。
沐浴することにより、俗から清へ、生から死へなど、ある状態から別の状態への移行を促進させます。
神社の前には手洗い場がありますが、手洗いや口をすすぐのも沐浴の一種と考えられます。

現在では赤ちゃんを入浴させることを沐浴といいますが、平安時代の宮中では「御湯殿の儀」という儀式がありました。
医療技術の発達していない時代ですから、無事に出産を終え、赤ちゃんが健康に育つようにとの願いをこめられたものでしょう。
壁一面に白布を下げ、白布の記帳を立て並べ、白一色の部屋の中で白一色の衣装に身を包んだ女房たちに囲まれ、真っ白な世界で出産します。
生まれたばかりの赤ちゃんに、湯浴みをさせる儀式が御湯殿の儀で、産湯とは別のものです。
これからの順調な成育を祈り、吉方である東の川や井戸から汲んだ水を用いて儀式的に赤ん坊に湯を浴びせかけますが、誕生から7日間、朝夕2回おこなわれました。
また、現在では産湯というと出産直後の湯浴みを指しますが、当時は生後3日目の湯浴みを指していて、宮中の皇子誕生の際には3日目のお湯殿の儀で鳴弦や読書などの儀礼がありました。

一般庶民の間では、生まれたばかりの赤ちゃんを母親の腰巻や、柔らかい布に包んで寝せておき、3日目の浴湯が済んだあとに初めて袖のある着物を着せました。
早くから袖のある着物を着せると怒り肩になるという俗信がありました。
posted by yunyun at 2006年01月26日04:24 | 入浴の歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする